로그인「あの家は、その娘さんである佐知代さんが護っています」
「……というと?」「ここからはまたその佐知代さんから聞いた話になります」「了解した」あの家が幽霊屋敷と呼ばれる事になるまで――。
さっちゃん事、わたし佐知代の家は、わたしたち家族が亡くなってすぐに、親族の方が引っ越してきた。その家族は佐知代さん達家族とは仲が良くなかったらしく、家に残っている物で勝の有りそうなものを売り払って行った。特に自分達には『もう必要の無いものだから』と思ってみていたけど、そこからがひどかった。
その親族は思い出がまだ残る建物自体も傷つけ始めた。最初は大事に住んでくれていたが一度傷を付けてしまえば、後はどうなって行っても構わないようになった。 それどころか、特に仲が悪かったお父さんが持っていたモノに関して、悪意のある傷つけ方をした。悲しさのあまり我慢が出来なくなったわたしは、怒りに任せて家の中で色々なものを叩いて回った。初めは何も反応が無かったけど、次第に親族は顔を青白くして震え出す日々が続くようになった。それもそのはずで、わたしが叩き回っていると大きな音がするようになっていた。それも日夜問わずにするんだから結構堪えたんじゃないかなと思う。
そんな事を続けていたら、ある日その親族は皆で家から出て行った。
一安心していると、すぐに違う家族の人たちが入ってきたりした。そして必ずと言っていい程、私達家族の思い出の品を壊したり傷つけたりする。
その度に私はまた家じゅうを叩きまわったりした。 そうするとまたすぐに住んでいた人は家から出て行く。そんな事を繰り返し何年もしていたら、少しずつだけど自分の姿がうっすらとみせることが出来るようになった。
そうなると私が見えただけで出て行く人たちが多くなった。私は何もしていないけど、どうやら怖いらしい。わたしと同じ位の子が良く来るようになったりもした。だから少し興味が湧いて近くに行くんだけど、や
「母さん?」『え? 何かしら?』 ちょっとした違いなのだけど、俺にはソレがすぐにわかる。「何か知ってるの?」『……そうねぇ~……』 そこまでしてもとぼける母さんは答える気がないみたい。母さんの態度を見て俺はため息をついた。「それでその巫女さんは――」「すまんお待たせした!!」 俺が市川のおじさんにその話の先を聞こうとした時、後から合流する予定だった相馬さんと公平さん夫妻が到着し、その場にいた人たちと挨拶を始めた。 そうなると叔父さんもそちらへと挨拶をしに行くので、俺としていた話は中途半端になって終わる。「母さん?」『何よ?』――はぁ……まぁいいか……。「何でもない。さてと、俺も皆と話をしに行こうかな」『…………』 この時母さんが何を見ていたのかを俺は知らない。「で、きょうの事なんだけど、聞いても良いかな?」「はい勿論ですよ。その為にご一緒しましょうと声を掛けたのですから」「すまない。俺たちまでごちそうになっちまって……。後で何か持ってこなきゃな美穂」「そうですね」 夕食を食べながら、皆で一塊になって話を始める。 その中に混ざった公平さんご夫妻はとても申し訳なさそうにしながらも、一緒に夕飯を食べていた。 そして一息ついたところで、話題は今日集落へといって来た事へと移る。「その前に確認したいんですけど」「なんだい?」「その集落は今公平さん達が管理を任されているんですよね?」「任されているといえばそうなんだが、実質的にはこのキャンプ場の運営のついでに、あの集落の周辺に行くやつがいないかを監視するくらいしかしてないんだ」
『さぁもういいでしょ? さっさと戻りましょうね?』 暫くは鳥居の周辺を調べたりしていたが、今朝がたに俺と伊織が視たモノたちの痕跡を発見するどころか、本当にこの鳥居の先にそのモノ達が向かって行ったたのかさえ分からないまま、時間だけが経過していた。 それを見かねたのか、ただ単に飽きたのか、母さんが俺の側まで着てそんな提案をしてきた。――確かに。このままここにいても何も分からないかもしれないな。それにもうすぐ陽が落ちてくるから、戻るのならばここら辺が無難かもしれない……。 母さんの言っている事を考え、太陽の位置やキャンプ場までの距離を考慮すると、確かに戻るタイミング的にはちょうどいい。「みんな!!」 周囲で色々と探したり調べたりしている皆に向けて声を掛ける。「そろそろ時間的には戻らなくちゃいけない」「えぇ~? もうすこしだいじょうぶだよぉ~」 相馬さんが反論するが、俺は首を左右に振った。「相馬さんの言いたいことも、皆がこのまま何もなしで戻る事にあまりいい気持がしない事も理解はできる。理解はできるけど、俺達は何かが出来るからここに来たわけじゃないし、公平さんには確認してきて欲しいと頼まれただけだ。そうですよね平先生」「そうね……」 俺が話を平先生に振ると、先生も大きなため息をつきながらこくりと頷いた。「なら、その確認するという事はできたと判断して、ここは一旦戻ろう」「それが無難ね」「そうねぇ~。このままここにいても何もわからないものねぇ~」 理央さんと響子さんが理解を示す。「ほら夢乃!! 藤堂君が――部長がそう言ってるんだから戻るわよ!! それに公平さんに起こられるのは嫌でしょ?」「確かに叔父さんに怒られるのはいやだなぁ……。バイト代減らされちゃうかもしれないし……」 少しだけシュンとなりつつも、日暮さんの説得に渋々頷く相馬さん。
『今行かなくてもいいじゃない?』『ほらほらあっちに川があるし皆でいこうよ!!』『しんじぃ~!! こら!! 無視するな!!』『伊織ちゃんは分かってくれるわよね?』 などなど。とてつもなく俺の後頭部がうるさいのはお約束のようなものだ。皆でいくと決めたからこそ今誰もいない集落の中を歩いて向かっているのだけど、入る前からしぶっていた母さんが一人でブツブツと言っている。 俺しか聞こえないのであれば、完全に無視することもできたのだけど、俺の隣を歩く伊織も聞こえているという事で、母さんから話しかけられた伊織はどうしたらいいのか分からず凄く困っている表情をしながら、俺の服の袖を二、三度くいくいと引っ張ってきた。 その度に気にするなと伊織に言っているのだけど、母さんにはちょっと弱いところがある伊織はどちらからの板挟みになってあたふたしている。「母さん」『ん?ようやく話を聞く気になった?』 赤い鳥居が身近に迫って来た時、俺は立ち止まり母さんに話しかけた。「あの周辺に何かあるのか?」『え? ど、どどど……どうして?』「どうしてって……。まぁその反応を見ただけで分かったよ」 はぁ~っとため息をつきながら母さんの方を見る。母さんは何とも言えない表情をしながら、俺から視線をフイっと躱した。「で? 何があるの?」『…………』「言わなくてもいいけどね。俺たちもうすぐ着くし」『はぁ~。……とりあえず行くのであれば鳥居の前までにしなさい』「そこまでは安全って事?」『今は……ね』 |今《・》|は《・》という意味深な言葉を最後に、その場での俺と母さんの会話は終了した。 それ以上は聞いても何も話をしてくれないと分かっているので、俺は再び先に進む為歩き出す。 立ち止まった時
すると、それまでは仕事をしていたのだから当たり前だと思っていた、工事をしていた時に使用していたであろうスコップ類やツルハシ、そしてヘルメットや軍手、中には食べかけで止めたような弁当の様な箱と水筒が、プレハブ小屋の周辺に散らばっている様子目に映る。「確かに……ちょっと変だね」「でしょ?」 ぼそっとこぼした言葉を拾った理央さんが返事をした。「……とりあえず、プレハブ小屋をみてみよう」「そうだね……」 俺が先に歩き出すと、俺の言葉を追って伊織もまた一緒に歩き出す。そしてプレハブ小屋の窓部分から中を確認する。「うわぁ……」「荒らされてる? ううん。荒れてるって言った方がいいのかな?」 ふと漏らした言葉に続いて中を覗き込んだ日暮さんからも、俺が言葉にしなかった気持ちと同じセリフが漏れ聞こえた。「ねぇ!! 中に入れるみたいよ!!」「「え?」」 小屋の入り口の扉をガラガラと開けつつ相馬さんが俺達に向け声を上げた。「鍵は?」「え? 開いてたよ?」「…………」 俺と日暮さんは顔を見合わせて黙り込んだ。――こういうところは相馬さんらしくて羨ましいな……。 先に何かあるかもしれないという様な恐怖心を全く感じさせること無く、その先へと行動に移せるところは素直に凄いと思う。 せっかくドアが開いて中が見れるというので、俺はそのままドアから中に入ることなく周辺を警戒しつつも様子をうかがう為に顔だけ入れてみた。 窓から見たときにも思ったけど、中は工事に関係する書類やファイル、工事道具やホワイトボードに書かれた公示予定表などが、働いていた人が最後にここにいた時、そのままの様子で残され
朝食を食べ終え、皆で片づけを終えると俺達は話をしていた場所へ向かう事にした。 初めは俺達だけで行く事に難色を示していた公平さんだったが、相馬さんが俺達なら大丈夫だと、いやなんなら伊織がいれば何かあった時に対処できると、ちょっと無理やりな感じではあったけど公平さんを説き伏せた。 確かに伊織がいれば何かあった時には困らないかもしれない。特に伊織のあの力が有るのであれば、ある程度のモノ達はどうとでもなるような気がする。 ただ、ただ表立ってそう言われると、俺という存在が一緒にいる事の意味が無いような気がしてくる。――確かにその通りなんだけどさ……。 がっかりと項垂れる俺を伊織と響子さんが慰めてくれる。相馬さんだって悪気が有って言っているわけでは無い事くらい、ここまで一緒に行動するようになってから分かってきたつもりだ。 それにしても、やっぱり目の前でそういう事を言われるのには慣れていたつもりだけど、実は地味に気にはなっているのである。「さぁいきましょう!! ん? どうしたの藤堂君」「いや夢乃あなたねぇ……」 俺が気落ちしている事に気が付いた相馬さん。首を傾げて俺を見ているのを見て日暮さんがちょっと話が有るからと少し離れた所に連れて行った。 何やら日暮さんに注意されているようだけど、相馬さんからは「え? どうして?」などという言葉が漏れ聞こえてくるので、俺の事をやっぱりあまり気にしていなかったようだ。ただ日暮さんからの注意を受け、かなりへこまされたようで、二人での話合いから戻って来ると、俺にすっごく頭を何度も下げつつ謝られた。 気にしてないと一応の対応はとっておいたけど、どうやらそれが虚勢だという事は伊織にはお見通しだった様だ。「大丈夫?」「ん? あぁ伊織か」 林の中――あの俺達が見た者たちが向かって行った先にある木々の間を歩いて向かっていると、俺の隣スッと並んできて顔を覗きこむようにしながら伊織が話しか
「公平さん。率直に聞きます。あの方向には何かあるんですか?」「あの方向?」 俺はスッと腕を上げ、その方向を指差すと、公平さんは俺の腕の方向へと視線を向けた。「っ!?」 そしてその方向を見て、目を大きく見開き驚愕の表情をする。「……君は……何かを見たのかい?」 視線はそのままで俺に声を掛ける公平さん。その声は少しだけ先ほどまでの声よりも低くなっていた。「そう言われるという事は、何かあるんですね?」「…………」「言いたくないのであれば別にいいですよ。このまま何もしないでいて、皆に何かあったら嫌なので後ほど確認しに行こうとは思ってますけど」「お義兄ちゃん?」 何も言わない公平さんに聞かせるようにして話をしていると、それを聞いた伊織が俺の方へと詰め寄ってきた。「何それ? 聞いてないんだけど?」「ん? だってこのままじゃ安心できないだろ? 確かに感じるのは俺と伊織しかいないかもしれないけど、皆に何も被害が出ないとは言い切れないわけだし。なら先手必勝?」「先手必勝って……ちょっと違うと思うよ?」「あはは。気にするな」 伊織と話をする間も、公平さんは視線を変える事無く俺が差していた方向を向いて動かなかった。「じゃぁ今日の予定はそんな感じ?」「え?」 公平さんを連れて来る時に一緒に来ていた平先生が、そこでようやく声を掛けてくる。「皆にもその事を言わないとね」「あ、いや。行くのは俺だけで――」「「ダメ!! (です!!)」」 元から一人ででも行こうと思っていたので、そう言おうかとしたら平先生と伊織から先にダメ出しをされてしまった。「じゃぁ私は皆を呼んでくるわね」 そういうと平先生は皆の方へと歩いていく。 その後ろ姿を見ていたら、公平さ